春画展に行ってきました

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どうも。嘴です。

永青文庫で春画展を開いていて、いずれ行きたいなーと思っていたのですが、気が付いたら12月23日までと終了間近だったので慌てて行ってきました。

公式サイトはこちら。

春画というのは小難しく言うと、人間の性愛を描いた浮世絵の総称で、端的に言うと昔のエロ絵です。といっても当時はその意味合いが今とはだいぶ異なっていて、庶民の人だけの楽しみにとどまらず、親王に献上するためにも描かれていたみたいです。

その春画というのは今になって再評価されているのですが、そもそもが性愛を描いているので博物館とかで特別展を開くのも難しいとか。大英博物館で特別展をやったときにも割と批判があったそうですが、その流れで日本でも開こうとしたらどこの美術館でもダメと言われた、とのこと。

性的な内容だから相応しくないという理由に加えて、全編18禁というのも二の足を踏む原因になっていたようです。特に公立の美術館だと『住民全員に広く見てもらう必要がある』という使命を負っているため、18禁だと『住民全員が見ることができない』ということになってしまうから難しい、と。

そんな状況で手を挙げてくれたのが細川元総理が理事長を務める永世文庫。最初はある程度の批判もあったようですが、事務所を改装して作られたこじんまりとした美術館でありながらも1日に2500~3000人程度が訪れるようになり、現在ではのべ15万人を突破したそうで。最近ではバス内で「春画展を見るときにはこちらの停留所が便利です」とアナウンスされたり、タクシーの運転手にも認知されるぐらいになったようです。

 

という経緯をもつ春画展に行ってきたわけですが、初期のころの肉筆画から戦前ぐらいまでのきめ細かい版画までと非常に幅広い世代の絵が揃っていたのでとても満足でした。

春画ってどうしても北斎のイメージが強くて、版画がメインの江戸時代しか考えてなかったんですよね。ところが歴史をさかのぼると平安時代ぐらいから描かれていたようで。版画が無い時代なので絵師が直接巻物に描く一点ものばかり。そんな貴重なものでありながらも「あの偉い人がこんなエロいことしてたんだぜー」みたいなパロディ作品もあるのが良いアクセントになってました。

今の漫画と同じように、時代によって流行があったりするのが面白いところ。ある程度時代に合わせて並べて展示されていたんですけれども、初期の肉筆画は背景を描くものが多かったのに、だんだんと背景なしのシンプルな感じになっていったり。

中盤にあった版画ゾーンでは絵柄の流行に加えて版画技術の進歩も見れたのが非常に良かったです。版画が登場してすぐのころは線が太くて稚拙な感じもあったのですが、技術進歩によって絵柄がどんどん細かく美しくなっていく過程も見られました。

当時は貸本という文化があったので貸本屋が運びやすいサイズに特化したり、見開きで楽しめる構図になったりと時代に合わせて様々な変遷をしているのがハッキリと分かりました。今の絵本でおなじみの『紙の下2/3がイラストで、上部の1/3に文章がチョロチョロっと描かれている』というスタイルも春画が最初だったみたいで。そんなところから絵本の原型があったとは。

 

個人的に楽しかったのが、『風流艶色真似ゑもん』(ふうりゅう えんしょく まねえもん)という作品。豆サイズに小さくなった主人公があちこちのセックス風景を解説するという設定の本なんですが、解説で「最初の頃は関東のいろんな風景を紹介してたけど後半は風俗レポが多くなってきた」って書かれてたのが笑ってしまいました。編集の要望で引き延ばされてる漫画かよ、と。

ちなみに、春画展のポスターでも描かれている鏡の絵『ねがひの糸ぐち』や、タコが女性とセックスをするという北斎の鬼才っぷりを存分に発揮した『喜能会之故真通』をセリフ付きで鑑賞できます。草書体だと読めないので、言葉遣いが古くても明朝体で表記してくれたのがありがたい。全体像を見ながらセリフも読めるので、じっくりと詳細に楽しめますよ。

 

極めつけは、一番最後のゾーンにあった偉い人が金に物を言わせて作った春画。個人的にはこれを見るだけで大満足でした。とにかくゴージャスで、当時の技術をフル活用したんじゃないかという感じのすごさ。

着物を着た二人がセックスしてる絵なんですが、着物の絵柄も非常に丁寧に描かれていたのがすごい。だって当時って(当たり前ですけど)スクリーントーンなんか無かったんですよ。版画だから木に彫って作っていたにもかかわらず細かい線がくっきりと。髪の1本1本、陰毛の1本1本までも丁寧に作られているんです。

更に何色使ってるんだよと思えるほどの色彩。版画の多色刷りって1枚の板に対して筆で色を塗る→擦って紙に定着させる→板の色を落として別の色を塗る……という繰り返し作業で作ったはずなんですよ(中学レベルの記憶)。それを何回やったんだよと思えるぐらい多くの色が細かく艶やかに描かれていました。正に職人芸。

それだけでなく金摺・銀摺・雲母摺なども備えているというのが贅沢すぎる。当時の技術を財力で凝縮した版画の集大成といった感じのモノですよ。今風に言うと、1色ごとにレイヤーを使って着物の模様も丁寧に描いたフルカラー+金ラメ+銀ラメ+黒ラメという感じ。贅沢すぎる。

偉い人が作ったからこそのゴージャスさとも言えるんですが、版画という技術でここまで繊細に作ることができるというのを作品を目の前にして改めて実感しました。アレは生でじっくりと観たほうがいい。このサイズの紙にあれほどまでに表現できるのか、と。

 

……というわけで、印刷技術の歴史や江戸時代の書物文化の歴史をも味わうことができる春画展。1500円であそこまで楽しめるとは思いませんでした。非常に満足。個人的にはすべての展示物に描かれている描き文字も看板とかに掲載してほしかったですが、『ねがひの糸ぐち』『喜能会之故真通』のセリフが読めただけでも充分です。

図録も販売してたんですが、4000円という金額はともかく、ジャンプ2冊分(コミックスじゃなくて雑誌の方)の大きさと厚さはさすがに購入を断念せざるを得ない。でもアレは資料として持っておいて良さそうだったなー。

残り期間があとわずかということもあり、非常に混んでいるので観るのが大変ですが、江戸時代の歴史とかに興味あるなら絶対に観たほうが良いと思える美術展です。春画という題材の時点で美術展が開きにくいのに、それをあそこまで詰め込むとは。実に有意義でした。

 

ちなみに、永青文庫って元々は細川家伝来のモノを展示してる美術館なので、春画にしれっと混じって細川家に伝わる道具とかが展示されてます。普通のオブジェかと思ったら代々伝わる高級品だったり、なんとなく置かれてるソファかと思ったら数多くの有名人が座ったこともあるぐらいの歴史あるソファだったり。ついでに見ていくのもいいですね。

 


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